チュルリョーニスの英語論文集



チュルリョーニスをより良く知るために必読の一冊があります。

Čiurlionis: Painter and Composer. Collected Essays and Notes, 1906-1989, with 209 illustrations(Vilnius: Vaga, 1994)というものです。


内容は

I. Biographical and Historical Perspective
II. Čiurlionis and his Russian Contemporaries
III. The Contribution of Vorobjov
IV. Čiurlionis and Abstract Art
V. Čiurlionis in the West
VI. Čiurlionis in Post-War Lithuania
VII. Čiurlionis, the Composer
Appendix:
I. Audrius Plioplys: Exhibits of Čiurlionis' Works Outside of Lithuania
II. Stasys Goštautas: A Critical Survey; trs. Timothy Bell, María der Rosario Mora de Cantú, Irene Ovaček del Corral, Ann-Dorothée Mongère, Tony Oldcorn, Beth Sims, Sharon Sloan
III. Classified Catalogue
IV. Selected Bibliography
V. Index of Names
VI. Illustrations
VII. Authors and Translators

読んでみて特に印象に残ったのは下記の3つ、
III. The Contribution of Vorobjov
IV. Čiurlionis and Abstract Art
Appendix: II. Stasys Goštautas: A Critical Surveyです。

第III章に論文を寄せているニコライ・ヴォロビヨフ(Nikolai Vorobjov, 1903-1954)はリトアニア生まれのロシア人で、マールブルク、ベルリン、ミュンヘンで芸術史、考古学、スラヴ言語、文学を学び、また、1941-44年にはヴィリニュス大学で学んでいます。そして、1948年には北米に移住しています。

ここでは、ヴォロビヨフによるチュルリョーニスに関する文献"M. K. Čiurlionis, der litauische Maler und Musiker (Kaunas and Leipzig: Probačis, 1938)より、第8章の"Čiurlionis in Vilnius"の英訳を読むことができます。この論文は、リトアニア語以外のヨーロッパ言語で書かれた初の重要なチュルリョーニスに関する文献とされています。また、今まで未出版であった彼のヴィリニュス大学時代の卒業論文、"Modernizmo epocha Europos mene" [The age of Modernism in European art] (1943)も収録されています。少々難しいですが、読み応えがあります。


第IV章に論文を寄せているアレクシス・ランニット(Aleksis Rannit, 1914-1985)は、エストニア人の詩人、芸術評論家、翻訳家です。彼以上にチュルリョーニスの名を西洋に広めるのに貢献した人物はいないと言われるほど、チュルリョーニスに関しては第一人者のひとりです。

ここでは、ランニットによる抽象画家としてのチュルリョーニスについての論文"Čiurlionis: The First Abstract Painter of Modern Times"の1957年版の英訳を読むことができます。この論文は1947年以来、「チュルリョーニスが現代における初の抽象画家である(かどうか?)」と多くの議論を生みだすもととなった論文でもあります。また、どのような議論が行われたかも同じこのIV章で読むことができます。


また、付録に含まれているII. Stasys Goštautas: A Critical Surveyには、さまざまな分野における歴史上の人物たちがチュルリョーニスについて言及した言葉が寄せられています。そのなかには、ジャック・リプシッツ、イーゴリ・ストラヴィンスキー、ロマン・ロラン、バーナード・ベレンソン、マクシム・ゴーリキー、セルゲイ・エイゼンシュテイン、アレクサンドル・ベヌアなどが含まれています。

  


最後に、日本人初のチュルリョーニス研究者、加藤一郎先生のお名前もこの論文集に載っていました。
加藤一郎先生は1975年、雑誌『ムジカノーヴァ』に『音楽と絵画芸術の接点~チュルリョーニスの生誕100年に寄せて~』という論文を寄せられています。また1976年には、Journal of Baltic Studies にもチュルリョーニスに関する英語論文を寄せていらっしゃいます。両方を取り寄せて読み比べましたが、内容はわずかに異なっていました。ぜひ読んで頂きたい論文です。

[PR]
by ciurlionis | 2009-01-04 23:59 |