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CD リトアニア人作曲家アルヴィダス・マルシス "Liberated Things" リトアニア国立交響楽団


先日サントリーホールでのリトアニア国立交響楽団の演奏会の後、楽屋に伺ってリトアニア人作曲家Arvydas Malcys (アルヴィダス・マルシス) 氏にお会いしてCDを頂戴したので早速聴いてみた。
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"Liberated Things" (Išlaisvinti Daiktai) : Works for Symphony Orchestra (Kūriniai simfoniniam orkestrui)
1. Festus Meae Terrae (1989) 11'57"
改革運動の機運が高まる1989年のリトアニアで作曲された作品。ラテン語から採られたタイトルFestus Meae Terrae (Feast of My Land) の通り、歴史的瞬間や喜びを待ちわびる様子を描いた色彩感あふれる祝いの音楽。

2-4. Liberated Things, Symphony No. 2 (2005) 25'00"
I. 6'55", II. 10'45", III. 7'15"
さまざまな形に組み合わされたリズムとメロディーのモチーフを作品中に散りばめて加速感を構築・表現している。

5-7. Concerto for Soprano Saxophone and Symphony Orchestra (2004) 23'10"
I. 8'39", II. 6'40", III. 7'37"
作曲者は「この作品では、シリアスな音楽とポップな音楽の境界を消そうと努力した」と言っている。ベルリオーズの《イタリアのハロルド》との関係を認めつつも、主人公にリトアニアの方言を与え、サキソフォンにその表現を委ねている。リトアニアの民謡やジャズ、ワールドミュージックのイントネーションを自由に組み合わせた作品。

8. Only Heaven above Us (2003) 13'34"
Total: 73'51"
チェリストのロストロポーヴィチ氏へ献呈された作品。ゆっくりとした弦楽器のクラスターが形成するノスタルジックな幻想をエピソードの反復によって構築・描写し、クラスターを変形させていくことによって空に浮かぶ雲の域に達することができるとしている。楽器のもつ自然な音色やその音色のスペクタクル、過ぎ去った過去の感覚の重要性を強調している。

Lithuanian National Symphony Orchestra (1-7)
Latvian National Symphony Orchestra (8)
Conductors/ Robertas Šervenikas (1), Juozas Domarkas (2-7), Andris Nelsons (8)
Soprano Saxophone/ Liūdas Mockūnas
©ⓟArvydas Malcys 2010

リトアニア人作曲家、アルヴィダス・マルシス (Arvydas Malsys) の作風はどのコンテンポラリー・アヴァンギャルドの従来の型にはまらないものである。彼の音楽は現代の文化と呼応しあう過去の経験や伝統を描写している。作曲家としてばかりでなく演奏家としても活躍する彼は、クラシック音楽と現代音楽の分野において深い知識と演奏技術を併せ持っている。演奏家としての経験から彼の作品の音楽形式は30以上もの交響楽作品、2つの交響曲、10の協奏曲など多岐にわたる。彼の音楽の多くは過去の歴史や現代におけるイライラ、生活のリズム、社会の盛衰、希望、夢、過ちなどを暗示・諷刺している。

お勧めは、ソプラノサキソフォンとオーケストラのための協奏曲 (Concerto for Soprano Saxophone and Symphony Orchestra) 。ドマルカス氏の指揮によりリトアニア国立交響楽団の良さが引き出されている作品。ソプラノサキソフォンのソロもさることながら、オーケストラの一体感がなんとも言えなく素晴らしい。次回の来日時にぜひ演奏してほしい一曲。

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by ciurlionis | 2010-06-27 23:59 | 音楽