芸術新潮2010年10月号のチュルリョーニス特集について


芸術新潮2010年10月号のチュルリョーニス特集を読みました。

ランズべルギス教授、チュルリョーニスのひ孫のズボヴァス、そして、先日の音楽学会でお目にかかったラサ・アンドリュシーテ・ジュキエネ教授のインタビューを楽しく拝見しました。

ただ、小沼純一氏の執筆した「音楽篇」は具体性に欠ける文章でチュルリョーニスの音楽に関してなにも得るものがありませんでした。かえって誌面の印象を悪くしている気さえしました。

チュルリョーニスの音楽を愛し、詳しく知る人は大勢いるのに、その方々によって執筆されなかったのは残念に思いました。

付録のCDは、昨年リトアニア国立交響楽協会からリリースされた2枚組CDからの抜粋盤。以前のランズベルギス録音にあったチュルリョーニス音楽の素朴感が薄れ、洗練された演奏になっています。

個人的にはソ連時代にメロディヤからリリースされたランズベルギス氏の演奏するピアノ曲のLPや、1998年にEMI ClassicsからリリースされたCDの録音の方が、本来チュルリョーニスの音楽のもつ牧歌的で素朴なイメージがよくあらわれていて、おすすめです。

芸術新潮誌上では、詳しい曲目の解説がなかったので、軽く解説をしておきます。

トラック1~5
プレリュードなど5曲 (VL186, 187, 189, 188, 197)

チュルリョーニスが1899-1903年に作曲した一連のプレリュードは、幅広い和音と多声のテクスチュアからなり、ロマン的な要素の上に、リトアニア民謡の旋律やリズムが用いられていて、最もチュルリョーニスらしい作品です。なかでも1901年の夏にリトアニアの保養地ドルスキニンカイにて作曲されたプレリュードは「ドルスキニンカイ・プレリュード」と呼ばれ、牧歌的で素朴な印象が強い作品。このCDに収録されているVL187, VL188, VL260の3曲はジョナス・メカス監督の映画『リトアニアへの旅の追憶』でも使用されていたので聞いたことがある方もいらっしゃるはず。

トラック6
"Sefaa Esec" の主題によるピアノのための変奏曲 (VL258)

1904年の作品。親しい女友達の名前、ステファニア・レスキェヴィチ (Stefania Leskiewicz) の綴り字から9音 "Sefaa Esec" (変ホ、ホ、ヘ、イ、イ、変ホ、ホ、ハ)を採用して音列化し、その主題をもとに7つの変奏曲が作曲されました。

トラック7
プレリュード ト長調 (VL338)

1909年にドルスキニンカイで作曲された8曲のプレリュードのうちの一曲でチュルリョーニス晩年の作品。この年初めにソフィヤと結婚し、自作の絵画と音楽作品がともにサンクト・ペテルブルグで発表されるなど、幸せの絶頂にありました。この曲を含む8曲のプレリュード(VL335, 337a, 338, 339, 340, 341, 343, 344)を聴くと、音楽を知り尽くしたチュルリョーニスの宇宙観を感じることができます。独創的なテクスチュアに新古典主義的な方向性すらうかがえます。そしてこれらの集大成としてチュルリョーニス最大の傑作、フーガVL345が生まれることになります。

トラック8
Pater Noster 「主の祈り」(パーテル・ノステル)(VL260)

1904年にワルシャワで作曲された作品。チュルリョーニスの音楽は1904年を境にして大きく作風が変わりました。この時期チュルリョーニスは彼自身の芸術への道を模索しており、美術学校で絵画を学ぶようになったことも影響したのか、空間的な拡がりや、新しい現代的な和声やリズムを試すようになっていきました。その頃の作品のひとつです。


下記にランズベルギス教授の演奏するおすすめCDを載せておきます。

”Born of the Human Soul” Čiurlionis Piano Works by Vytautas Landsbergis

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また、リトアニアをソ連邦からの独立回復へと導いたランズベルギス教授の英語による自伝も出版されていますのでご興味のおありの方はぜひどうぞ。

Lithuania Independent Again: The Autobiography of Vytautas Landsbergis [Hardcover]

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芸術新潮 2010年 10月号 [雑誌]

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by ciurlionis | 2010-09-27 23:59 |